2015「ファスナー世界年鑑」のインタビュー記事

インタビュー日: 2015年11月9日

インタビュアー:  ファスナー世界雑誌

インタビュー:   旭和螺絲  総経理 村山 育生  

このインタビュー記事を11月号の「ファスナー世界年鑑」で出版します。



1.まず、貴社の成立背景・事業内容・主力商品といった会社紹介をお願いします。

  当社は今年、創立46周年を迎えます。1969年9月に日本の日東精工株式会社(以下、日東精工という)と台湾の和泰興業股份有限公司との合弁により誕生しました。創立から10年後、現在の臨海工業区に移転を機に社名を『台湾日東精工』から、現在の『旭和螺絲工業股份有限公司』に変更しました。これを契機に、台湾経済やアセアン地域の発展を取り込むことで、順調に成長することができました。 事業内容は、ねじを中心にした圧造部品の製造・販売と、ねじを締めつける省力機械と検査装置など日東精工で製造した製品の輸入販売と合わせて、『ファスニングソリューション』の実践を行っています。

2.貴社はファスナー産業において自分をどう位置付けていますか。貴社の特色や特長は何ですか。どのようにして月産65千万個、年商6.3億(台湾ドル)の会社になりましたか。顧客の心をつかむ秘訣、今の事業規模を果した方法はなんでしょうか。事業成功の心境や感想は?

  弊社は日系のねじの製造会社としては、早期に海外進出を果たすことができ、台湾島内だけでなく、中国大陸やアセアンの成長を取り込むことで、ピーク時には月産6億5千万本を達成することができました。 その後、日東精工グループとしてインドネシア・タイ・マレーシア・中国大陸にそれぞれ現地法人を設立して、更にグループとしての供給量やスピードを上げて、時代に合わせたグローバル対応を推進し、その変化に対応してきました。弊社の特徴としては、まずは日本品質を台湾製造品で実現していることです。日系のお客様を中心に販売を伸ばしてきましたが、製造技術や品質管理面はもちろんサービスすべての日本品質を届けることができる強みがあります。次に、納期対応力です。台湾は人口が少なく、製造業は大陸を中心に海外にシフトしており、日本以上に空洞化が進んでいます。そのため、弊社の取引の実に85%が海外向けとなっておりますが、物流納期を感じさせないスピード対応が強みとなっております。

3.貴社のねじ製品、自動組立機、流量計、特殊ねじの市場状況や市場景気について説明して頂けますか。そして目指す先はなんでしょうか。

  弊社のねじ製品は6㎜以下の比較的小さなねじを製造しており、市場としては時計や携帯電話やカメラといった小さいものから、自動車まで幅広くご愛顧頂いております。これらの市場は世界的な人口の増加にともない伸びています。また、自動組み立てなどの省力機械分野は、人件費の上昇や安全作業などの観点から、今後期待できる有望な市場だと考えております。また、市場は機能重視と価格重視の二極分化していくと考えます。弊社は、機能重視の提案型製品の開発により、お客様満足度を高めていきます。今後は、日系に限らず世界のすべてのお客様にサービスが提供できるよう、従来の中国語・日本語に加えて、英語・フランス語・ドイツ語にて対応できるように営業体制を強化しております。


4.日本はファスナー技術開発力に対して先進的な国だといっても過言ではありません。貴社と同じように日本ファスナー産業は常に革新的な製造技術で独自の競争力と高い地位を保っています。M-techといったファスナー展に行けば新開発を展示する会社をあっちこっち見かけます。いま日本ファスナー業者の開発トレンドはなんでしょうか(例:低コスト、新材料など)。そして、日本ファスナー業界全体の次の開発ポイントはどの辺に傾くと思いますか(例:宇宙航空ねじや医療ねじなど)。最後に、台湾にある貴社の立場から見て、台湾と日本の開発トレンドの違いはなんだと思いますか。台湾と日本のファスナー市場環境はどうのように違いますか。

  世界の基本は、衣食住です。それに続くものとして、1.高機能・高性能、2.軽薄短小3.安心・安全、4.健康・高齢化というキーワードの方向に進むと考えます。弊社もこのキーワードに沿って、新素材・新工法・新業種に向けて新たな提案をすべく取り組んでいます。台湾と日本の開発のトレンドは、開発時期こそ差がありましたが、昔からほとんど方向性や傾向性の差は無いと考えます。台湾も日本もお互いに天然資源の少ない事情を抱えており、知恵で勝負しなければなりません。市場の望むものを、一歩先の開発を進めて行かなければ、商機が出てこないと考えております。

5.今年のファスナー景気をどう感じていますか。好調ですか。来年の景気をどう見ていますか。

  今年の景気は、必ずしも良いと言える状況にありません。中国大陸の景気減速を受けて、全体的に生産調整段階に入っています。また、アメリカなど一部の地域を除けば、景気は停滞気味であまり良い状況とは言えません。来年度も、前半まではこの状態が続くものと考えています。

6.貴社はISOSONY'S GREEN PARTNER認証を取得しただけでなく、台湾のトップ大型企業にランクインしました。これからの認証取得・受賞の目標はありますか。

  弊社は、ISO14001、ISO9001、OHSAS18001の認証取得に加え、各社お客様の品質要求基準を満たすことで、取引を拡大してきました。今後は、来年2016年に、TS16949の認証を新たに取得する計画があります。

7.今のターゲット顧客・市場・産業・地域は?お探しの事業パートナーや顧客はどんなタイプですか?海外の拠点(例えば中国)、今後の海外投資や販売計画はありますか。

  今後は、業界的には車業界への供給比率を上げながら、日系や地域に限らない取引を実践していきます。中華圏やアセアン地域に加え、アメリカ・欧州・インドをはじめ、これまで取引が少なかったところへの供給に力を入れていきたいと考えております。メーカー・流通商社に拘らず、お互いのメリットが活かせる活動を通じて、お互いがウインウインの関係になれるパートナーを求めます。弊社の海外拠点として、2002年に中国浙江省に子会社『日東精密螺絲工業(浙江)有限公司』を設立して、大陸のお客様の身近で対応できる体制も整えております。今後の海外投資については、直近での具体的な計画はありませんが、積極的に資源を投入して、成長を目指したいと考えています。

2015-11-09